幼馴染は恋をする
『好きです』
って、いきなり言ったらどう思われるだろう。
何も知らない。恵和君の名前は知ってるけど、どこの誰だか、名前も…。歳は知ってるけど。それなのに、好きだなんて…。もし…もし言ったら?…何言ってるのって相手にもされないかも。かもじゃなくてきっとそう。…よくて有り難うって言ってくれるだけかな。
「無理にとは言わないよ。…なんかね、誰でもいいから聞いてもらうと楽になることもあるからね」
「…有り難うございます、…大丈夫、です」
…はぁ。………言えない。言えないよ。
「うん、じゃあ、今度こそ、おやすみ」
「あ、はい。おやすみなさい」
…また会えますか?くらい、言えば良かった。不自然にならない程度に、この辺りに住んでるんですか?とか。できたら、名前、教えてくれませんか?て…。聞くのは不自然?それ必要?て…思われちゃう?
これじゃあ、恵和君にちょっと親切にしただけの、ただの中学生だよ。嘘言っても、この制服じゃあ…どこから見ても中学生なんだよ。会った時が制服だったもん、誤魔化すことも、無理。……せめて高校生くらいだったらな。って、嘘はいけない。
今日は会えた。
それだけでもラッキーだよ。
「…ただいま」
「おかえりなさい、ねえ?朝、早速なんだけど聞いてくれた?」
「え?何を?」
「貴浩君によ。好きな物、お母さんの得意なものじゃなかったら困るから」
「あー、大丈夫、ハンバーグがいいって」
「ハンバーグ?普通でいいかしら」
「普通じゃないのって何?」
「ほら、チーズ入れたり、和風だったりあるじゃない」
あー、ファミレスみたいってこと?
「普通のでいいと思うよ。ソースも普通で。そんなにこだわらなくても…」
「じゃあ、普通と、チーズを入れたのを作ろうかしら。それでいい?男の子でしょ?どのくらい食べるのかしら」
はぁ。
「いいと思うよ。量も普通で。あとね、お父さんの都合のいい日で、当日に言われても大丈夫だって。どっちにしても帰ってくるのは私達の方が早いから、帰って来た時、お母さんが言ってくれたらそのまま貴浩君に居てもらえばいいよ」
ちょっと居る時間が長くなるけど。
「そうね。その日はケーキも買っておかなくちゃ。何が好きかしらね、ねえ?朝」
…お母さん、何だか嬉しそう。ソワソワしちゃって…。
「ケーキの好き嫌いなんて…きっとなんでも食べるよ、お母さんのお勧めでも買ったら?」
「それでいいの?」
「…いいよ」
なんか、どう見てもテンション高め……不安。絶対勘違いして張り切ってるとしか思えない。