幼馴染は恋をする
「お父さん。お父さ~ん」
インターホンも押さず、恵和の声がした。…早いじゃないか。
カチャ。
「あ、おぅ、早かったな。おかえり」
「うん。ただいま」
繋いでいた手を放し飛びついてきた。
「もういいのか?」
恵和を抱き上げ、麻衣に声をかけた。
「うん、恵和がもう帰るって」
「…そうか。あー、次、いつにする」
「ん、まだ解らない。今日だって早いうちに決まらなくて、平日になっちゃって。休ませちゃってごめんね」
「まあ、それは仕方ないよ。特に行事がある日でもなかったから…」
「休日は基本休めなくて。無理に言ってクビになると困るから」
「ん。サービス業は仕方ない、忙しい日に休まれると困るからな」
「うん。…あのね」
「ん、あぁ、恵和、中に入って手洗いしてうがい。おやつはちょっとだけ、テーブルに置いてあるから」
「うん」
「ジュースは分かるな?」
「うん」
バタバタと下りると靴を脱いで入った。洗面所に入るのを見届けた。