幼馴染は恋をする
「別に何も持って行かなくていいのか?」

「え?いいよ別に」

「そりゃあ、朝は自分の事じゃないから、要らないって言うけど」

「じゃあ、何か持ってく?でも、学校からそのままだから買っておくのは難しいよ?」

「じゃあ、帰りにどっか寄って何か買う」

「どっかで何かって?フフ、ハハ」

「……何か、近所にそれらしい店とかあるだろ?」

「あるけど、何買うつもり?」

「母さんに聞いてみるよ」

「そうだね、それがいいよ。だけど、本当に手ぶらでいいんだから。寄って欲しいって言ってるのはうちの親なんだから」

「うん、まあ適当に」

「うん。あ、うちのお母さんの買う物と被るといけないからちょっと聞いておくね?あのね…前にも言ったけど、きっと誤解してなんか言うと思うから。特にどうして欲しいとか“指示”じゃないけど、貴浩君の好きなように答えてくれていいから、まかせるよ」

「…解った。ちょっとドキドキするな」

「大丈夫。どうせ、違うとか言っても、言えば言うほど照れ隠しなんだって思っちゃうんだよ。本当、思い込みって凄いよね」

「雰囲気だけで思ったんだから仕方ないさ」

「雰囲気?雰囲気っていっても私達が帰ってる様子なんて直接見たことないと思うのよね…。あ、またあれかな。近所の人が噂的にお母さんに言って、そんな感じなの?みたいに言われるがまま、いい感じじゃないのって。でも聞いた訳じゃないから解らないけどね。単純なのかな、二人で帰って来てるっていうのを知って、それだけで」

「俺には解んないな…」

「うん、解んないね、親の考えてる事なんて。…ちょっとは解るけど、過剰だよ…」

「それは仕方ない。心配だからだし、まだ大人じゃないから」

「そう、大人じゃないから。あ、ねえ、写真撮ろう?」

「は?いきなりなんだよ…」

「履歴書?」

「履歴書?」

「んー、違うけど。いいから、撮ろう?」

…ハズイって。

「待て。わっ」

腕を引っ張られた。

「はい。私のお姉ちゃんの名前は?」

「あ?あー、里(り)…」

カシャ。

「OK!」

「…英(え)だろ…」

「当たり。上手く撮れてる、見て?」

…当たりとか…はぁ。…酷い顔じゃん…。

「お父さんが驚かないように、見せとくね?」

「ぁあ゛?…もう…何だよ…」

二人の写真なんて益々おかしくさせんじゃないのかよ…。意味が解らん。
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