幼馴染は恋をする
・俺は違う
「本当にこれでいいのか?」
手提げバッグの持ち手を広げて見せた。渋い包みだ。
「うん、大丈夫。だって多分、ケーキはお母さんが買ってると思うから」
「じゃあいいんだな」
「うん。食後に丁度いいよ。お茶と合うでしょ?」
…栗の入ったどら焼きって…渋いよな。袋も……渋いし。お茶も渋い…。
「いいも悪いも、もう買ったし…」
母さんもどら焼き、好きっちゃ好きだから大丈夫なのか…。そういえばよくお茶してるもんな。
「なんかドキドキするね」
お前が言うか…。
「ドキドキするのは俺の方だ。なに聞かれるか解んないんだから。怖いっちゃ怖いよ」
「大丈夫」
「大丈夫ってな…朝、急に変な事、言うなよ?」
「変な事って?」
俺を巻き込むような事だよ、とは言えないか。場合によってはまた俺がそういう事にされるって事だよな。
「…言わない。勇気がいるもん」
「…うん」
「あ」
「ん?」
「おねえちゃ~ん」
「あ、チビ…」
走って来てる。けど、見てるのは俺じゃないみたいだ。朝に向かって一直線だ。
「え?わっ」
「チビじゃないー。恵和。おねえちゃん!」
足に巻き付くように腕を回した。
「そうだ、恵和だったな。また走って、危ないだろ。…ん?お姉ちゃん?」
「恵和君…一人?」
「朝、この子…もしかして」
「あ、うん。……ぁ」
「違うよ、お父さんも一緒」
恵和を抱きとめていた朝の目線が上がった。……あ。きっと、そうだ。
男の人が小走りで来ていた。
「はぁ…こんにちは。また、急に走って…はぁ、ごめんね。コラ、恵和、走るな」
「…だって。居たんだもん」
「…こんにちは」
朝の顔がキツくなった。挨拶する態度がぎこちない。やっぱり、この人が…。俺も挨拶しとくか。
「あ、こんにちは」
「こんにちは、ボーイフレンド?」
「え゙」「えっ?」
「そうです」「違います」
「え?」「え゙?」
…。
「ハハハ。じゃあ…同級生?そう聞けばよかったかな。…ボーイフレンドって言われると恥ずかしいよね」
「違います!」「違います!…同級生は同級生ですけど」
「ハハハ、息、ぴったりだ」
「おねえちゃん、見て?ピカピカツルツル」
半ズボンで見えていた膝をしゃがんで更に見せられた。
「ごめんね?これをどうしても見せたかったらしくて。じゃあ、恵和、いいな?」
「うん!」
あ、…。
「あ、俺、朝の幼馴染で、貴浩って言います」
「恵和、おねえさんは、朝ちゃん、おにいさんは貴浩君っていうお名前だって」
「うん」
あ、帰っちゃうみたい。
「私は柳内(やない)です」
「やないだいすけだよ。お母さんはまい、もう、やないじゃないの」
「あ゙ー、コラコラ、勝手に余計なことを…」
やないだいすけさん…。恵和君…グッジョブ!
そして奥さんだった人は…まいさん。