幼馴染は恋をする
「じゃあ、これで」
「…あ、はい。恵和君、綺麗に治って良かったね。急に走っちゃ駄目よ?」
「うん。バイバイ」
「バイバイ…」
手を振り合った。恵和君と手を繋いで帰って行った。
「…はぁ」
「今の人が…」
「うん。あ、有り難う」
「ん?」
「貴浩君が自己紹介してくれたから、名前、分かった」
「あー、何となくだ」
何となく自己主張してた…。
「恵和君も教えてくれた」
「あー、下の名前ね」
だいすけって言ってたな。チビの言う通りなら…バツイチ。本当にバツイチみたいだな。だとしたら不倫にはならなくて済むんだ…。
「良かったな分かって。まあ、結果オーライ?」
「うん」
なんか俺、あの人にも微妙に勘違いされた気がしたけど。
「大丈夫か?動揺とかないのか?このまま帰って大丈夫か?」
「大丈夫。って…どうかな…。本当はドキドキしてる」
…だろうな。緊張してたからな。
「でも大丈夫。行こ?」
「ああ、うん。…お」
…朝?何だよこれ…。
「ん?誤魔化し?」
朝が手を繋いできた。…そうか、今、会ってたから。また誰かに見られてたんじゃないかって思ったんだ。俺もチビも居たし、大丈夫だと思うけどな。噂に敏感になってるのかも知れないか…。
「ドキドキの誤魔化し」
あ゛、なんだ、…そっちか。……これどうとれば…あ?…誤魔化し?…訳が解らん、俺とドキドキしてるって?。それって…妙に複雑だな。
「着いたよ?入るけどいい?」
「いいも何も俺は別に…」
大丈夫だけど?
「ただいま?お母さん?」
「は~い。おかえり~、貴浩君よね、いらっしゃい。写真より全然イケメンね」
「あ゙あれは。…あ、えっと、こんにちは。今日はえっと、ご馳走になります。これ、お口に合うかどうか。…どうぞ」
写真のこと、不意をつかれて急に慌てた。挨拶の言葉、せっかく練習しておいたのに。袋から出して渡した。
「…まあ。…しっかりしてるのね。有り難う、良かったのよ?気を遣わなくて」
「母が持って行けと」
「フフ、これ、大好きなのよ?有り難う。さあ、上がって?」
「…お邪魔します」
揃えて出されたスリッパに足を入れていると朝に脇を突かれた。
「アタ。何だよ…」
「しっかりしてる?……イケメンかな…?ハハハ」
「…煩い…。そっちこそ、写真…」
「見せるって言ったでしょ?」
そうだけど。友達の親にイケメンだとか、おかしくないか?…ふぅ。まあなんとか、どら焼きも好きだったみたいだから、第一関門、突破したぞ。