幼馴染は恋をする
「お父さん、そんなには遅くならないはずだけど、…まだ時間が空くの。ちょっとお茶にしようか」
「うん。あ、私、するから」
「朝は先に着替えてきなさい。貴浩君、上着、脱ぐ?掛けておこうか?」
「あ、俺は大丈夫です。脱いでもそこら辺で…」
「そう?緊張しないでね?」
「はい」
ソファーに座るように言われた。
そう言われても、朝が部屋に行ってしまったから、…下りて来るまでプチ緊張じゃないか。
「コーヒーって飲む?いつもどうしてるの?紅茶なら大丈夫?」
カップを並べている。
「え?はい…どっちでも大丈夫です」
大丈夫じゃないっつうの。コーヒーだったら、砂糖とミルクをたっぷりで、なんて、店じゃないんだから注文なんてできないよ…。
トントン、トントン…音がした。朝だ。下りてきてる。はぁ、助かった。
「いらっしゃい」
げっ。
「お邪魔してます…」
…里英だった。
「フフ、畏まっちゃって。あ、お母さん、カフェオレにしてあげて。ミルクたっぷりで。ね?」
…。
「そうなの?それでいいの?」
「…はい、何でも…」
…。
トントン、トントン…。今度こそ朝だ。
「お母さん、ついでに私も」
「はいはい。…そうよね、朝と同じで良かったのに…」
…おいおい。ちょっと、それは…違うと思うけど。まあ、カフェオレの方だと嬉しいけど…。
「ねえお母さん、ケーキ何にしたの?」
「うん?色々よ。だって、全部同じだとつまらないじゃない?」
「じゃあ、私、モンブラン」
「え、ちょっと狡い。私もモンブラン」
「まだ見てないでしょ?あるかどうかも解らないのに…。はいお皿が先よ、出してちょうだい、フォークもね」
朝と里英はカチャカチャと並べ始めた。なんか居場所がないって感じだ。居る人が女の人ばっかりってちょっと独特の圧があるな。
「貴君浩は?何が好き?」
聞かれてもな…。
「朝、なんちゃって」
「まあ!里英ったら。フフフ」
…。
里英、殺す…。
ケーキボックスを持ってきて開けて見せられた。
「お客さんが一番、騒がしくてごめんね。遠慮しないでいいのよ?」
里英が一緒に覗き込む…もう、俺はどうでもいいんだって。モンブランを気にしてるんだろうけど。
「どれも好きなんで、みんなが好きなのを取った後でいいです」
もう、疲れた…。
「やるじゃん、じゃあ、私と朝はモンブラン」
さっきから…一々煩いんだって。本当に、日頃から電話で話してると遠慮がなくなるんだからな…。言葉遣いも何気にうちの姉ちゃんに似て来たし…。
お父さんに会うまでに姉で疲労しそうだ。…もつかな。