幼馴染は恋をする

無事にと言えるかどうか解らないが、喧嘩することなく好きな物を選び、テーブルを囲んでいた。

「貴浩君、高校は?」

「はい、S工に行こうかと…」

「勿体ないんだよ貴浩君、勉強できる、偏差値高いんだよ」

「でもね、S工に行くのは先の事を考えての事なんでしょ?」

「まあ、はい」

「一緒の高校に行けないからって、お母さんに訴えてるの?」

「な…お姉ちゃん、違うよ」

「フフ、どうだか」

「違うから…」

…もう、本当…うざいぞ。

「学校は違ったって、こうして会えばいいじゃない、ね?朝だって、貴浩君のお家に遊びに行かせてもらえばいいんだし。あ、ほら、期末とかの、貴浩君に勉強見てもらったりするのもいいじゃない」

だから、別にうちに来ることは構わないけど、そういう関係性ではないんです…。なんて言えばいいんだ。ただの同級生です、か。俺は朝をチラッと見た。やっぱり変に誤解されてるんじゃないかと、同意を求めようと思ったんだ。だけどそれがまたいけなかった。

「あ、アイコンタクトなんかしちゃって~」

となる訳だ。……もう、こうなったら早くご馳走になって帰りたい。


「帰りは暗くなるし、お父さんに送らせるから心配しないでね」

「あ、いや、俺、男だし全然平気です」

「駄目よ、保護者として責任があるから」

あ、まあ朝の噂とかを信じてると男だからといっても…そういう事になりますよね…はぁ。
最終的にはお父さんと、車という密室の兵器が待ってるんだな…。


「そろそろ準備しようかしら…」

…帰ってくる時間が近づいて来たんだ。カップや皿は総出で片付けたらあっという間だった。はぁ…なんで俺はこんなに緊張しないといけないんだ?
そもそも、特別な事じゃないはずなんだ。そりゃ、顔を合わせるって事に緊張はあるけど。…子供だし、別に粗相があっても大丈夫だよな。
大人になって両親に"ご挨拶"に来てる訳じゃないのに。どうも妙な事になってる。

「用意は出来てるし、焼くだけだから、朝、部屋に居てもいいわよ?」

え゙?また俺をお母さんと二人にするのか?お父さんが帰ってくる前に話でもあるっていうのか?

「貴浩君と」

…は?……はぁあ?

今日一だ、半端なくドキドキし始めた。
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