幼馴染は恋をする
「ただいま。おぅ、いらっしゃい、貴浩君、だね」
「はい、お邪魔しています」
俺は立ち上がって頭を下げた。
「うん、招待しておいて待たせてしまって申し訳ない。予定が少し狂ってしまって。駄目だからな?貴浩君はこんな風に段取りの悪い大人にならないようにね、…ちょっと着替えてくる、もう少し待たせるけどごめんね?」
「あ、いえ、大丈夫です」
お母さんと二人で居なくなった。
……はぁ、…緊張した…。
「あとは食べるだけだから」
…朝。いいや、話が待ってるだろ?色々聞かれるだろ?
「朝、里英、並べるのを手伝って」
お母さんが戻って来た。
「緊張しないでね?難しいお父さんじゃないから、普通にね?」
そう言われても。
知ってるようで知らないみたいな、友達の親って何だか不思議な感覚だ。
「…はい」
「はい、お待たせ…」
着替えの終わったお父さんが現れた。お父さんが座り、それぞれ座った。俺は朝の隣、お父さんの前になった。
「さあ、食べよう」
いただきますと言い箸を上げた。
「どう?」
「あ、いや、まだ…」
「お母さん、慌てすぎ。まだ貴浩君、お味噌汁じゃん」
「ごめんなさいね。不味くはないと思うけど気になっちゃって。どう?」
「だから、お母さん、まだだって…。急かすと味なんて解んないよ?」
「ハハハ、今夜は賑やかだな」
「お母さんが浮かれてるんだよ、男の子だから、ドキドキしちゃって?」
「里英…。だってね、初めてだから。小さい頃に来てくれた時は会ってないし、噂だけの貴浩君じゃない」
「だからドキドキ?……まあ、お父さん以外に“若い”男の子の免疫がないもんね」
「そうよ。あ、ごめんね、変に煩くして」
「いいえ、大丈夫です」
……何て答えたらいいのか。取り敢えず待ってるみたいだから、ハンバーグを一口食べた。
「美味しいです、凄く」
「そう?はぁ、良かった…。遠慮しないでご飯もお代わりしてね?」
「はい」
「良かったね、お母さん、少し落ち着けるね」
主に話すのは里英が中心なんだと思った。俺が言うのもなんだけど、みんなのバランスを取ってる気がした。