幼馴染は恋をする
いきなりびっくりした。
付け合わせの人参があまり好きじゃないという里英は俺の皿にそれを入れ、代わりにマッシュポテトを掬い取ったからだ。
「ちょっと、里英…何してるの?」
「いいの」
「いいのって、なんだ、里英、妙に…」
朝ならともかく、姉の方が俺に突拍子もないことをするからそれが腑に落ちなかったのだろう。…解る。俺だってびっくりしたくらいだ。
「たまに電話で話してるから親しいのよね?」
それが馴れ馴れしいって思われる言い方なんだって…。
「あ、はい、まあ、姉が話してると、代わる事もあって…」
「あぁ、それでなのか。いきなり里英が随分な事をするからびっくりしたよ」
里英との電話は知られてないのかも知れない。話も、朝が心配な話題ばかりだから。きっと部屋に居てかけてきてるに違いない。
「そうなの、お姉ちゃん、何気に貴浩君と親しいんだよ?」
「そうなんだ…。父さん、知らない事ばっかりだな」
いや、別にこそこそしてるって事ではないです、はい。電話の事は、どういう状況で話してるのかまでは解らないですから。
「こんなに話しながら食べる事は珍しいんだ。私も遅くなる事が多いから夜は一人が多くて。たまに一緒になっても口煩い決まり事ばかりの話になってしまってね」
「そう、勉強はしてるのか、家の手伝いはしてるのか、友達とは仲良くしてるのか、とかね。お父さん言ってること昔から変わらないよね?」
「…そうだな」
「里英…お父さんは心配してるのよ」
「子供が大きくなって来たら、男一人だと圧倒されてるんだ」
所在無さげだな。女の子だしなぁ。
「あー、なんだか解ります。何とも言えないけど、圧みたいなのありますね」
「そうそう、それだよ」
俺も今日思ったから。