幼馴染は恋をする
「目茶苦茶賑やかだね」
確かに。大人二人に歳の近い子供が四人も居たら邪魔なくらいだ。
今回も話の主導権は里英みたいだな。
「誠人君もカフェオレが好きなの?」
「はい、好きです」
おい、俺もって、どういう意味?と囁くから、前に俺も聞かれたからと答えた。なるほどねと納得したようだ。
「じゃあ、そうしましょうね」
「遠慮せず座りなさい」
「はい、失礼します」
俺も緊張してない訳じゃないけど、誠人程ではないから、誠人を見てると楽になった。
「同級生と言ったね」
「はい」
「将来とか考えてるの?」
「あ、いえ、まだ…」
「うん、…そんな物なのかな…。あー、堅い話をして悪かったね。娘達に言われる前にこれ以上は止めておこう」
「そうよ、お父さん。面接じゃないんだから
。ただフラッと寄っただけなのに、色々問い詰められたらたまったもんじゃないわよね」
「ハハハ、そうだよな、すまなかったね。他意はないから」
誠人が、おい、たいってなんだよって、聞くから、言った言葉の他には何もないみたいな意味だって答えた。なるほどな、と納得したようだ。
「はい…お待たせしました…カステラは大丈夫よね?」
「はい」
「丁度貰い物で美味しいのがあって良かったわ。うちでは滅多に買わないのよ、こんなカステラ」
本当だ。皿にのせられていたカステラは高級感を主張していた。これはうちでも買わない。金粉が付いていた。綺麗な黄色のカステラだった。きっと卵にも拘った物に違いないと思った。
「内祝いで貰ったものなんだ。うちは女性陣が圧倒的に多いから、男の子が居ると味方が出来た気分だな」
「お父さん、この間から、そんなことばっかり。余程、男の子が欲しかったのね…」
「そんなことじゃないが、里英も朝も結婚したら、父さんはきっと、夫になる人と仲良くすると思う。だから安心してていいぞ?」
「いつの話ですかね。まだまだ先ですよ」
「うん、確かにまだ先の事だな」
おい、今の、俺らのことを差して言ってるんだよなって誠人が妙に嬉しそうに囁くから放っておいた。朝達に向けて言ったに決まってるだろうから。
「あ、気にせず食べてね。人の親の呟きみたいなもの聞かせちゃって、ごめんなさいね、つまらないわよね」
「僕もお父さんと仲良く出来ると思います!」
「あら…まあ。やっぱり誠人君は接客業に向いてるわ。天性の物かもね?」
おい、てんせいってなんだって聞くから、生まれつき持ってるっていうような意味だと伝えた。…ほぅ、と喜んだ。天才じゃないよなって言うから、今は、天性って言われたんだと答えた。
「僕、将来、接客業をします。まだそれが何かよく解りませんが」
「フフ、そうね、選択肢の一つにしておくのもいいかもね」
せんたくって言い始めたから、言い終わるまでに二つ以上ある答えだ、と伝えた。
「沢山あった方がいいでしょうか」
「それは自分の向き不向きがはっきり解っていれば選択肢はそう多くなくてもいいんじゃないかな。反対に何も見つかってないなら、色んな物に目を向けてチャレンジするのも悪くはないと思うよ。やりたいことを仕事にするのか、仕事は仕事と割り切るのか、それでも違ってくるね。単純に仕事は収入の為と思えば、趣味を充実させるのも頭の切り替えの一つだな」
「…はい」
「…お父さん」