幼馴染は恋をする

「あぁ、つい、語ってしまった。いや、真剣に聞かれると真剣に話さないと失礼だと思ってな。いい加減なことは言えない」

「有り難うございます。お、僕、親父ともこんな話、面と向かって話したことがなくて。いつも、ガチャガチャしてる家なんで。下に弟と妹が居て」

「楽しそうね。だから誠人君は明るいのね」

おい、褒められてるのか?って聞くから、そうだって答えた。

「僕は貴浩や朝ちゃんみたいに勉強はできないから。元気だけが取り柄なんで」

「いいじゃないか、勉強は勉強。時頭の賢さとはまた違うよ?」

おいって言ったから、その人本来の頭の良さってことだと答えた。褒められてるんだと思えばいいとも付け加えた。

「必要最低限、困らないくらいの学力と知識は必要だけどね」

「やっぱりそうですよね」

ほぅと、喜んでいたはずがもう落ち込んだ。まあ、な。

「誠人君は貴浩君とは?」

「小学校から同じです。お、僕は保育園、こいつ、貴浩は幼稚園だったんで」

「幼馴染か…。いいもんだよな」

「はい。高校も一緒なんです。あ、まだ予定です、二人とも受かればですね」

「あぁ、いいね…。ずっと楽しい」

「はい、馬鹿言い合って、気心が知れてるから楽しいです」

「あー、残念だなぁ。朝は高校では一緒じゃなくなるんだなぁ」

「うん…」

「寂しいな、朝」

「うん、まあ、死ぬ訳じゃないから、会おうと思えば会えるよ」

「ぐわっ。なんかスパッと切られた感じ、やられた」

「ハハ、そうだな。まあ許してやって欲しい」

「あ、いや、大丈夫です。朝ちゃんは頭の回転が速いから。僕も今のはつい普段の癖で返してしまって…」

「大丈夫、それで構わないから。親が居てこうして話してるんだから、答え辛いよね」

「はい、いいえ。わあ、貴浩~」

助けを求めてきた。どうやらもう限界が近いらしい。

「アホ丸出しだって?」

「…うん」

「アハハハ、…うける」

「年齢らしい、素直でいいじゃないか。何も気にする必要はない。朝の親だと気にせず、歳の離れたおじさんと話してると思ってくれればいいから。おっと、話し込んでしまった。ちょっとはちょっと。あまり長いと辛くなるだろうからね」

「はい。…あ…すみません」

「また遊びに来てやってくれるかね?」

「はい、是非」

「うん、貴浩君も、また寄ってくれ」

「…はい」

結局、誠人のお陰でなんの苦痛もない時間だった。
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