幼馴染は恋をする
「いい子達だな」
「はい、それぞれ、個性のある」
「うん。朝は?」
「そこまで送るって」
「…そうか」
「お父さん…」
「うん。仲良しだな。男女がどうとかいうより、まだ本当の仲良しこよしだな」
「朝が言ったことはそんなに深い意味はなかったんでしょうね。それこそ、友達…そういう意味で貴浩君が好きって」
「…うん。どうもそれがよく解らん。ああいう聞き方をしたからかも知れなかったが…。だったら、貴浩君のように答えるのが極普通な気もするんだ」
「だとしたら、他に…。私達の知らない人で好きな人が居るのかしら…」
「まあ中学生らしい好きなら別に誰を好きでも心配はしないんだが。最近は噂はないのか?」
「噂は噂はですから、一体いつのことやら、定かではないってことにもなるから…。だいたい、朝が」
カチャ。
「もう、止めよう、朝だ」
「…はい。私は夕飯の支度しなくちゃ」
こっちに足音が近づいて来ていた。
「帰ったのか?」
「あ、うん」
「楽しい子だったな、誠人君だっけ」
「うん、ムードメーカーみたいな人だから」
「そうだな。誠人君も貴浩君と一緒にご飯に呼ぶといいよ。お父さんは居なくてもいいから」
「うん、まあ、どうかな」
「ワイワイ食べるのは楽しいだろ?」
「うん。お母さんも嬉しいかもね?」
「お母さんも?」
「うん、お母さん、男子が好きみたいだよ?凄く楽しそう」
「うん、母さんは…。ああ、今夜は何かな」
「多分、かき揚げ?違う、鯵フライと、クラムチャウダー?お母さ~ん、今夜のご飯は何かってお父さんが」
「あさりご飯と鯵フライよ?」
「だって」
母さんは、もう一人子供が欲しいと言ってた。それを止めたのは私だ。里英が居て、朝がうちの子になった。それまで母さんは男の子も欲しいと言ってた。だからといって、希望通り男の子が生まれると解ってることでもないんだが。女の子が生まれても良かった。三人になってもいい、望むようにつくっておけば良かったか…。
達成されなかった望みは強く後悔として残りやすいからな…。
「お父さん?」
「ん、ああ、鯵フライか…美味しそうだな」
「うん」