幼馴染は恋をする

「…ただいま、遅くなってしまって、本当に…」

…あ。寝てる。弱ったな。起こして帰さないと。

「朝ちゃん、朝ちゃん…」

変に触れて体を揺する訳にもいかない。テーブルに伏せている側で声をかけた。

「………あ、…ごめんなさい、すみません寝てた、はぁ」

「あ、ごめんね、有り難う助かったよ。色々疲れたんだろう。恵和はちゃんと寝てるようだし」

「はい、お風呂はいいってことだったので着替えとか、歯磨きとか、ちゃんとしました」

「…有り難う。さて、どうしようか」

「はい、貴浩君と勉強してることにしてるので、貴浩君と帰ります。そうじゃないと大変なことになるから」

「ごめんね。今回は急な仕事になってしまってね。麻衣は仕事の時間帯で無理だって言うし、延長保育にも時間が足りなくなりそうだったし、託児所も頼めなくて。駄目なのに君に頼ってしまった」

「大丈夫です、でも、私も偉そうには言えません。貴浩君が居てくれたから来れました」

「本当、…偉そうなことを言っておきながら、こんな……頼みごとをしてしまうなんて。妙な噂になったら誤解は全力で解くから」

「大丈夫だと思います。貴浩君、来てくれることになってるんで連絡します」

携帯を出してメールした。

「直ぐ来るってことです」

「大丈夫かな、遅くなったら親御さん心配するだろ?」

「心配はします。でも、貴浩君が一緒だと大丈夫なんです。中学生だから、もしかしたら、また帰りは父が貴浩君を送るとか言うかも知れませんが、父も帰って来るのはいつも遅いので」

「はぁ、本当に申し訳ない)」


コンコンコン。

「あ、きっと貴浩君です。速い、走って来たんだと思います。恵和君が寝てるからピンポンしない方がいいって言っておいたんです。出ますね」

「あ、朝ちゃん…」

カチャ。

「貴浩君…」

「朝、帰ろう」

「うん」

「貴浩君、迷惑かけて申し訳ない。送ってあげられるといいんだけど、それも申し訳ない」

「…大丈夫です。繁華街を彷徨いていたら補導されるけど、住宅街ですから、気をつけるんで大丈夫です」

「本当、申し訳ない」

「では、おやすみなさい。朝、ちょっとでも早い方がいい。急ごう」

「うん。解ってる。柳内さん、おやすみなさい。あ、オムライス、よけてあります、良かったら食べてください」

「有り難う、おやすみ。じゃあ、貴浩君、お願いします」

「大丈夫ですから。おやすみなさい」
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