幼馴染は恋をする
「ごめんね、こんな、嘘の片棒を担がせて」
「渋い表現だな。こうなったら一蓮托生?ハハ、四字熟語とか、本当に勉強してたみたいだな。
なあ、朝。…親に嘘つくって、しんどいだろ…」
「…うん」
「うちにさ、勉強しにくるっていうのも、まあ、試験前っていえば、ありっちゃありかも知れないけど。ドキドキしたよ。丁度、親が居ない日だったけど、姉貴には言いようがないから。朝の友達が朝に助けを求めてきたことにして、今日、うちで三人で勉強してたことにしておいてくれって言った。朝が来ないままだから、おかしいことになってしまうからね。こんな時は複数にしていた方がいいんだ。なんとなく、複雑な話の方が誤魔化せるから。朝は特に気にせず俺んちに勉強しに行ってたでいいよ。余計な話をしなかったら誰となんて聞かないだろうから」
「うん、……何気に策士だね」
「はぁ、誰がそうさせてるんだか。朝は冷静にはなれないだろ?」
「うん」
「どうよ、上手く作れたのか?」
「うん、何とかね」
「うわ、何とかってくらいのクオリティーの物を食べさせられるなんて、恐っ」
「美味しくできた。食べてみたし、恵和君も美味しいって…」
「良かったな、作った物、食べてもらえそうで」
「え?」
「柳内さんの分も作ったんだろ?」
「あ、うん」
「だったら、今頃、食べてる頃だろ…」
「そうかな」
「そうだよ」
朝の家に着いた。ドアを開けた。
「ただ…」
「待て、俺が先に言うから」
「え?うん」
「こんばんは~」
「あ、貴浩君」
「遅くまですみませんでした。なんだか熱中してたみたいで、時間の感覚がおかしくなってたのか、気がついたらこんなに遅くなってしまってすみませんでした」
「大丈夫よ。それより、送ってもらって有り難う。お父さんが居たら送れるんだけど、大丈夫?帰り」
「大丈夫です、男ですから」
「んー、本当、ごめんなさいね」
「いえ、じゃあ、おやすみなさい」
「はい、気をつけてね?」
「お母さん、ごめん遅くなりました」
「何よ、もう…大丈夫よ。……あら」
「え?」
「う、ん…何でもないのよ、さあ、入ろう」
「うん」
朝は玉子焼きの匂いがこんなにするのに…。貴浩君は何も匂わなかった…。