幼馴染は恋をする
「朝ちゃんじゃないのか?」
朝?…だとしたらまずい。
「どこに…」
「あー、だったとしたら、…早く見ないから紛れたかも…」
「本当に居たのか?」
ドキドキしてきた。
「んー、多分、そうだったと思うんだ…」
……危うく出会すところだった。
「でもさ、小さい男の子と手を繋いでたから、親戚か誰かと一緒なんかな。あ、観覧車、あんま待たなくてよさそうだぞ」
「あ、ああ」
「なあ、メール、してみようか」
「誰に」
「…だから、本当…鈍いよな。今、話してたんだから朝ちゃんに決まってるだろ?」
デニムのポケットに手を突っ込んだ。
…待て、止めさせないと。
「なんで」
「なんでって、俺ら、遊園地にいるよーって、だ。もし朝ちゃんも来てるなら、私もーとか、返信あるかも知れないじゃん」
「止めとけよ」
「なんで」
…。
「俺ら二人で来て、私は誘ってくれなかったんだって、文句言われるだろ。来てることは内緒だ」
こんな誤魔化し、聞くかな。
「あ、そうか、そう言えば誘わなかったからな、まずいな、止めとくか。………あ?でも朝ちゃんは朝ちゃんで来てんじゃん。…ん?あれ?」
「あー、誠人が見たっていうのが朝だとしたら、声もかけない方がいい。邪魔しても悪いだろ。後でどっかで会っても俺と来てたって言うなよ」
「ん、そうだな」
出しかけていた携帯をポケットに押し込んだ。
「あ、俺らの番だ。乗ろうぜ」
「…あ、ああ。…なんで二人で観覧車にまで…」
「定番だろ?」
それはカップルの、だろ?男同士も、そうか、カップルはカップルか。
乗り込んで座った。
「…何分くらいなんだ?」
「さあ、でかいし、ゆっくりだから?10分とか15分くらいなんじゃないか?」
…長いな。上から眺めるなんて。まずいかな。
「あ」
早速なんだよ…。
「貴浩、こっち来い、早く」
なんでだよ…。
「はぁ、なんで並んで座らないといけないんだお前と…」
「いいから、早くしろ」
手を引っ張られた。ガタガタ揺れた。
「馬鹿、なんだよ、静かにしろよ」
「見て、やっぱ、俺見間違いじゃなかっただろ?朝ちゃんだ、ほら」
俺の方からは見えなかった。誠人の方に来て見えた。朝だった。男の子は間違いなくチビだ。
「あぁ、本当だな」
…まずいな。