幼馴染は恋をする
「こっち見ないかな。手、振ったら気がつかないかな」
誠人は両手を振り続けた。
「駄目だな。上見ないと気がつかないな」
「そうだよ、もういいだろ、もう止めとけよ」
俺はまた向かいに戻った。チビと二人だけってことはないはずだ。…三人一緒になってそれをこいつが見たら…。親戚のおじさんだと本当に思うかな。
「そうだな、あぁ行っちゃった。あ゙ー」
「今度はなんだよ…」
「イケメン野郎だ、ほら、アイツも来てるんだな」
は?何でもかんでも、片っ端から見つける奴だな…。
「あの子だ。ほら、幼馴染だっていう、あの子と一緒だほら」
幼馴染の顔まで知ってんのかよ。
「へえ。いやに今日は知り合いと一緒になる日だな」
「イケメン野郎、本当はあの子だったのかな」
「さあ…解んないこと勝手に決めつけんなよ」
「ん、まあ、それはもうどうでもいいよ。朝ちゃんとは終わってるんだし」
「ん」
「あー、なんか食べ物買っときゃ良かったかなぁ。あっ」
今度はなんだ。
「あれ、美味しそうだから降りたら買おうな?メッチャでかいソーセージ、みんな買ってる」
「ああ、…何見てんだか、空とか景色でも見ろよ…」
視線は極力上にだ。
「ん、ん、別に、特別な物が見える訳じゃないし…。ホテルが見えたって別にって感じだしさ。やっぱ、カップルで乗るもんだよな」
「だから、観覧車ね…って、言っただろうが」
「ん、まあ、いいじゃん。経験?」
「経験?なんの?」
「今後、デートに来たら、この辺でこう……とかさ?それから、天辺に来たら…チャンス…」
はぁ…誰を抱きしめてるんだか…。
「そんな日、来るのか?」
「あ?さあな、あっ」
「今度はなんだよ…」
「朝ちゃん、男の人と一緒だ。男の子と三人だ、こっち来たら見えるぞ?」
「…へえ」
「やっぱ子供だな、メッチャ嬉しそうだぞ。見ないの?まあ、そっちからでも振り向きゃ見えるけどな?」
「別に興味ないし」
「あー、親戚とはいえ、妬いてんのか?」
「なんで妬くんだよ」
「だから……もういいよ…つまんない男だな」
「誰がだよ」
「お前がだよ」
「知るか」
俺は今日、朝とここに来てるんだからな。