幼馴染は恋をする
「そろそろ帰るか…もう食べたいものもないか?」
「…そうだな、ぼちぼち、帰るか…」
「大丈夫か?ヘロヘロだな。ハハハ。じゃあ、…現地解散てことで」
キャーキャー言って、お化け、しばき倒してたからな。
「ああ。あ?ここでか?」
「ああ」
「うー、解った、じゃあな」
「じゃあな、あ、また暇だったら今度はお前が誘えよ?」
「……考えとくよ。遊園地には来てもお化け屋敷には絶対入んないからな。じゃあな」
「おお」
誠人と園内で別れた。……はあ、なんとか、無事に済んだか。あとは……待ってるだけだな。
「貴浩君」
朝だ。
「もういいのか?」
「うん、有り難う。待った?時間、曖昧にしか無理だったから、ごめんね」
…朝、楽しめたのかな…。
「あ、柳内さんは帰ったから」
「そうか。なあ、今回みたいなの…」
「ごめん…、急に」
「違う。止めてくれっていうんじゃなくて。なんていうか、おじさん達に上手く言えなかったかなと思ってさ。知り合いになった男の子にお願いされたんだって感じで。それでさ、その流れで、変な噂のこと、違うって、その子のお父さんだからって話しておいたらさ、自然に会えるようになれるんじゃないかって。居るところ見られても大丈夫になるじゃん。今日もその親子と一緒だけど、俺も一緒だからって言っておけば、…次、三人だけで居るところを見られてももう大丈夫じゃん、と思ったんだ」
「ごめん。…そうだよね。全然考える余裕がなかった。…でも、自分に隠してる気持ちがあるから、何だかもう……そういう風に純粋に言えない…」
そうだよな、言うなら最初の内にだ。
「…楽しかったか?」
「え、う、ん」
「楽しめなかっただろ」
そんな調子じゃな…。余裕がないよな。ずっと色んなドキドキで一杯だったはずだ。
「うん。誰かに会うんじゃないかって」
「だから、そこなんだよ。知り合いの人でいいじゃんか、疚しいことがないんだから」
…ないんだろ?
「そうなんだけど」
気持ちはただの知り合いの人じゃないもんな…。態度も表情もぎこちなくなって…隠せないよな。
「親戚なんじゃないか、って、言ってあるから」
「え?」
「誠人にだよ。朝達を見つけたから。人が多いだろうから大丈夫だろうって甘く見てた。…ビビったよ。あいつ、キョロキョロ色んな人のこと見てるから。大丈夫だ。もう朝の家に行くこともないし、柳内さんとチビは親戚だって信じ込んでるから」
…。
「だ~い丈夫だよ。もしなんか不審に思ったら、まず俺に聞いてくるやつだから。それと、イケメン野郎も居たってさ。幼馴染の子と。見かけなかったか?」
首を振った。
「見かけなかった。ていうか、気がつかなかったのかも知れない…」
「堂々としてたらいいんだよ。人の目を気にしておどおどしてたら余計変だ。それに落ち着かないから楽しめないだろ?チビにどうしたのって言われるぞ」
「…言われた、…何回も」
「そうだろ。せっかくチビが来たいって言って、それを理由に来れたんだから」
「うん、そうだけど…」
「家まで送るよ、俺らも帰ろう」
「あ、うん、そうだね。今日は有り難う、ごめんね」
いいんだ別に…ごめんなんて。柳内さんはきっと朝に謝ったんだろうな、子供の我が儘につき合わせてしまって、て……言ったんだろうな…。