幼馴染は恋をする
はぁ、無事送り届けた。人、多かったでしょ、とか二言三言言葉を交わした。おばさんも特に不審がってることもなかった。
ブー。ん?……これ、あの時の…、だとしたら朝か?…違うよ、な。…。
【柳内です。電話してもいいかな?】
柳内さん。…そうだったんだな。この番号はやっぱり柳内さんだったってことだ……。
【はい、大丈夫です】
RRRR…。
「はい」
「貴浩君?」
「はい」
「ごめんね、番号。これは前に朝ちゃんが消し忘れた物なんだ。慌ててたから、着信までは気が回らなかったんだと思う。恵和が熱を出した時に連絡をとったのは君のようだね」
柳内さん、気づいていた…。朝が一時間くらい一緒に居たことにしてっていきなり連絡して来た時だ。あれは迷惑メールだった。偶々携帯を見てたからタイミングよく見ることが出来たんだ。一瞬里英のからかも知れないと思ったけどそれだとなんでそんな事をするんだと思った。携帯を持ってなくて余程慌てて送って来たんだとは思ったけど、それが柳内さんの物からだったとは。朝も大胆な事を思い付いたんだな。取り敢えず、なんとかしようと慌てたのか。
俺もこの番号は何となく登録しておいた。
「あ、はい」
…普通に話さないとな。
「君は朝ちゃんのことが好きなの?」
…え?どうしてそんな事を聞くんだろうか。……早く答えろ、俺。
「友達です」
…はぁぁ。なんだか変な返しになったな。
「では友達だから協力してるってこと?」
迷いなく答えるんだぞ。
「はい」
いいよな、協力してることが解っても。
「私は、好きかと聞いたんだけどな」
…。
「好きです、友達として」
「それが答え?」
「はい」
「私は君より大人なんだ。少なくても君より恋愛経験もある、結婚経験もある。朝ちゃんから何も言われてはない、だけど解らない訳じゃない。鈍感な振りを通して来たが、朝ちゃんのことは可愛いと思っているよ?」
「はい」
「はい、か……気持ち悪いと思わないか?いい歳した大人の男が、随分離れた女の子を可愛いだなんて言ってるんだ、おかしいだろ?」
「そうは思いません。……朝は…可愛いですから」
「フ、あー、…なんて言ったらいいか解らなくなったよ。君は随分優しい、寛大な友達なんだね。でも一つ忠告しておくよ?遠慮とか気遣いとか、そんなもので退いてしまったら、恋愛では負けだよ?あの時はこうだったと言っても、取り返しがつかない事もある。そういう“見守り方”が好きならそれでいいだろうけどね」
「なんの話ですか?」
「恋愛の話だよ」
「そうでしたね」
「朝ちゃんはやっと高校生だ。これからだ。これから沢山人に出会う。私のこともその中の一過性のモノだと思っている。思っていた。恋愛感情など持ってはいけないと思った。でも彼女が大人になってまだ私を好いていてくれたら、その時は私は彼女を奪いたいと思っている。そんなに遠い未来じゃない。君も君で沢山の出会いがあるだろう。朝ちゃんは君の中で同級生のままでいられるだろうか。この先、未来で…ずっと友達だと言っていられるだろうか」
「友達は…友達です」
その部分は、何が加わって何が無くなっても永遠だと思う。朝は朝だ。
「ん。急な電話なんかして一方的に大人ぶった話をして悪かったね。これっきりにするから。番号も返信も消しておくから。この話は特に内緒にしなくても、好きに話してもらって構わないからね。じゃあ、お礼を言っておかないといけないね。今日のことも、朝ちゃんに協力してくれて有り難う」
プ。
……はぁ。なんなんだよ、いきなり…。