幼馴染は恋をする
「犯罪者だよ、あんた」
「はあ?俺は別になにも…」
「心当たりが無いとは言わせない。胸に手を当ててよく考えてみな?」
さっきから刑事気取りで…暇潰しか?
「過去の“犯罪”が表沙汰になったのよ。…挨拶に来たってよ」
挨拶?……。
「…誰が…どこに」
なんか……胸がザワザワする。
「いい?言うわよ?朝ちゃんちに、子供を連れた男性が。解った?」
……挨拶。
「挨拶って…」
「はぁぁ、長々と私が話す?お姉ちゃん切なくなっちゃった…。ふん…話さなくても、“協力者”には何もかも解ってるんじゃないの?あんたは…本当、呆れる程お人好しね。言い換えたら、お馬鹿?…はぁ、……馬鹿ね、本当…」
「柳内さんか」
「…うん、確か里英がそう言ってた。子持ちで、だから、バツイチなんだけど、娘さんを大切に思ってきましたって。頭を深く下げて、こんな歳の離れた男ですけど娘さんと結婚させてくださいって、言ったんだって」
…。
「……大丈夫?」
「なにが」
「何がって」
「こうなることは宣言されてたことなんだ」
「え?宣言?なによそれ」
「…しかし、…早かったな…」
大人になるのを待ってるんじゃなかったのか。…もう結婚…。
「だから、馬鹿なのよ。その宣言がどんな内容かは解らないけど、……察しはつくよ」
…。
「でも簡単にはいかないわね。いきなりだから、まず人物が解らない。どんな理由でバツイチになったのか。朝ちゃんの親にしてみたら寝耳に水よ。だって、つき合いたいじゃなくて結婚させて欲しいだからね。色々考えちゃうでしょ、何も解らないんだから。生活が不便だから早急に家事をしてくれる人が欲しいだけじゃないのかとか、穿った見方をしたらいくらでも悪く思えてもくるのよ。なにもそんな歳の離れた人と結婚しなくてもって、親なら思っちゃうじゃない。子供だって居る…」
「もういいから、姉貴が言ったみたいに俺は最初から知ってる。だから今更姉貴に聞かされなくても解ってることだ。それに」
「なによ」
…。
「なによ」
「…いい歳した男が、結婚前提でなくてつき合えるかよ…」
もう、確か37だろ?…オジサンなんだよ、あの人は…。はるかに大人なんだよ。
「謝りに行ったら?あんた、何度か嘘をついて協力したんでしょ?親御さんにしてみたら、それがなかったらって、思ってるかも知れない。あ、結婚に反対してるだろうってことでよ?
あんたにだって、誤解されたくない事があるならちゃんと話せばいいし。こんなこと、言われると嫌だろうけどね。あんたは解ってること言われるの嫌な子だから」
「解ってる」