幼馴染は恋をする
中学の入学式。不思議だった。居るとは解っていてもだ。見つけた時、居た、と思った。俺は多分、探していたんだと思った。本来なら知らないはずの女の子。それが、もう知ってる。同じ小学校出身の中でともちゃんを知ってるのは俺だけ。俺だけが知ってる。なんだかよく解らない優越感に顔が緩んだ。知らない顔の中で知ってるってだけで凄く違った。

同じクラスになった。『…元気?』『うん、元気』それだけがやっとだった。初めて見る制服姿。照れ臭かった。前、会った時よりもっと恥ずかしかった。あっちはどうなんだろう。…でも、あの時みたいな顔をしてるから、多分、ともちゃん、緊張してるんだと思った。

班を決める事になった。ジャンケンだ。変な緊張感でちょっとした騒ぎだ。よく解らない同士一緒になると初め上手く喋れないし。
男子だけ、女子だけにならないようにそれぞれでジャンケンだ。一回一回終わるごとに妙なテンションで煩いし、時間もかかる。だけどこれがみんなを親しくさせてるんだと思った。

勝って決めたいと思った。俺は勝った。ジャンケンは強い方だ。勝ってともちゃんと同じ班になった。先に決まっていたともちゃんのいる班を選んだ。なんだか、嬉しいような恥ずかしいような、変な気持ちだった。一緒になった他の奴がともちゃんをチラチラと見ていた、何回もだ。きっとこいつはともちゃんの事がもう好きになったんだと思った。

ともちゃんは男子に人気があった。最初にチラチラ見てた奴もそうだけど、他にも、妙に姿を追ったり、追ってる奴を突っついたり、見てると解った。ともちゃんは他の女子よりちょっと大人っぽい感じだった。

朝(とも)は、二年生の時に三年生と、三年生の時には二年生とつき合っていた。
どっちも向こうから言われてだ。
そのどれも俺はよく知ってる。
初めてともちゃんに会った日から俺は自分の事を俺と言うようになっていた。ともちゃん家からの帰り、姉ちゃんに、急に生意気になって、おっかしい~、と言われた。
中学になって、ともちゃんの事を、朝と呼び捨てるようになった。一緒だったのは中学の三年間だけだった。
< 9 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop