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それはまるでお祭りが始まる時の挨拶のようだった。


にこやかな笑顔で大志を見つめる女性教師。


「綱渡りって……落ちたら死ぬんじゃ……?」


誰かがそう呟いた。


その声は静かな体育館内で女性教師まで届いたようで「その通りです」と、答えた。


「落ちたら死ぬ。命をかけた綱渡りを今林大志君に命令します」


退学になった大志への命令に息を飲む。


そんなことできるわけがない。


ステージから後方の倉庫までは40メートル以上ありそうだ。


その間、通常より細いロープの上を歩くなんて……。


その時、大志が動いた。


唇を引き結び、無言で脚立を上って行くのだ。


「嘘だろ、やるのかよ……」


また、誰かが呟いた。


あたしは自分の心臓が早鐘を打ち始めるのを感じていた。


剣山が蛍光灯に照らされてギラギラと不気味に光っている。
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