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そんな中、大志は脚立を上まで登りきり、第一歩を踏み出していた。


「ちょっと、本気でやるつもり!?」


ステージに近い場所に座っていた女子生徒が大志に直接声をかける。


しかし、大志はそれに返事をすることなく、綱の上に2歩目を出した。


ピンと張られていない綱は、少し歩くだけで大きく揺れる。


大志が一歩前へ進むごとに、体育館内には悲鳴が響いた。


それによって更に綱が大きく揺れているような錯覚を引き起こす。


「こんなの、最後まで渡るなんて絶対に無理だよ……」


隣に座っていた美文が涙目でそう呟いた。


大志の体は綱の上でどうにかバランスを守っているが、それもいつまでもつかわからない。


綱の上からでは、倉庫までの距離が果てしなく長く感じられるはずだ。


その証拠に、大志の額に汗が滲んできているのが見えた。
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