新・イジメ.COM
それでも、大志は足を止めない。


一歩、また一歩と徐々に脚立から離れて行く。


離れれば離れるほど後戻りはできなくなっていくのに、今の大志にその気はないようだ。


みんなが固唾を飲んで見守る中、大志は体育館の中央あたりまで移動してきていた。


時間にして40分くらいは経過していると思う。


その間ずっと綱の上にいる大志は、時折大きくバランスを崩し始めていた。


いつ落下して死んでもおかしくない不安と緊張感の中、ここまで来られただけでもすごいことだった。


やがて大志はあたしたちの目の前まで移動してきた。


4分の3くらいは進んでいる。


目の前で綱を渡る大志の呼吸音が聞こえて来た。


大きく、深く呼吸を繰り返して自分の気持ちを落ち着かせているのが伝わって来る。


大志のシャツは汗で体にへばりつき、時折汗が剣山の上に落ちて行った。


と、その時だった。


思いもよらぬタイミングで大志が体のバランスを崩したのだ。
< 117 / 242 >

この作品をシェア

pagetop