新・イジメ.COM
もう立っていることもやっとだったのか、大志は中腰になって綱を両手でつかみ、どうにかバランスを取った。


体育館のあちこちから悲鳴があがり、美文は咄嗟に手で顔を覆っていた。


でも大丈夫だ。


大志はまだ生きている。


ただ、これからどうやって体勢を立て直して歩き出すかが問題だった。


大志は中腰のままジッとゴールを見つめている。


綱はまだ揺れていて、簡単には止まりそうにない。


大志は辛抱強く綱の揺れが収まるのを待っている。


「今すぐ立ち上がり、歩き出してください」


ふいに聞こえてきた声に、生徒たちはいっせいにステージへと視線を向けた。


そこにはまだマイクを持った先生が立っている。


「なに言ってんだよ! 無理に決まってんだろ!」


見かねた男子生徒が怒鳴り声をあげる。
< 118 / 242 >

この作品をシェア

pagetop