新・イジメ.COM
「そこには男性の医師もいたんだけど、いきなり何かの注射をされようになったの」


そう言うと、克己が眉を寄せ、クラスメートたちはどよめいた。


「だから必死で謝って、解放してもらったの。でもその時に言われた『次はないわよ』って……。次に同じように仮病を使ったらどうなるかわからない。もしかしたら、退学になるかもしれない」


あたしはボートの上で死んでいた2人を思い出してそう言った。


「仮病を使って学校を休むことはできないってことか……」


誰かがポツリと呟いた。


きっと、あたしと同じ考えを持っていたクラスメートもいるだろう。


落胆に似た雰囲気が教室内を包み込んでいた。


「そっか。教えてくれてありがとうな」


克己がそう言い、あたしの頭をポンッと撫でた。


その手の温もりに、ホッと胸をなで下ろす。


誰からも批判の声は上がらないし、伝えなきゃいけないことを伝えることができたのだ。


これで、仮病が原因で死んでしまう生徒はいなくなるはずだ。
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