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そっと手を伸ばして、ヘアゴムに触れた。


畠平さんも今教室で同じような状況にいるのかもしれない。


「とにかく! 今は俺の言うことを聞け」


文句を飛ばす生徒たちへ向けて田中先生は怒鳴り、黒板を殴りつけた。


一瞬にして私語が消えて、どこからかすすり泣きの声が聞こえ始めた。


「アナウンスにあったように今からこの学校必要なアプリをインストールしてもらう」


田中先生は元の口調に戻り、スマホを取り出すように命じた。


胸の奥はモヤモヤとした気持ちが残っていたけれど、とにかく説明を聞いておいたほうがよさそうだ。


あたしは田中先生に従い、大人しくスマアホを机の上に置いた。


教室内を見回してみると、スマホを持っていない生徒は1人もいなさそうだ。


「これから手順にそってダウンロードしていけ」


田中先生はそう言い、綺麗な黒板にダウンロードの手順を書き始めた。


カッカッとチョークの音だけが軽快に聞こえて来る。


「ちなみに。ダウンロードしなかった生徒はこの場で退学だ」


手順を書き終えた田中先生の言葉に一瞬教室内がざわめく。


しかし、そのざわめきはすぐに消えて行った。


先生の言う事は聞いておいた方がいいと、暗黙の了解が出来上がった気分だった。
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