新・イジメ.COM
その言葉にハッと息を飲む。


そう言えば美文のときもあたしの時もそうだった。


大した傷じゃなかったのもあるけれど、寮へ戻っても治療は受けていない。


「で、でも骨折だけならちゃんと治るはずだよ!」


本当はどうかわからない。


克己の体力や気力も関係してくるだろう。


でも、克己はここまで自分の力で歩いてきたのだ。


きっと、ボートで本土まで移動するくらい、我慢できる。


「いいじゃねぇか。自分から行くって言ってるんだから」


生があたしの腕を掴んでそう言った。


克己は頷き、自分からボートへと向かって行く。


あたしはしきりに周囲を見回した。


先生たちの姿はない。


生との脱出計画はスマホを使ってもいないし、大丈夫。


きっと大丈夫だ。


それなのに心臓は早鐘のように打ち始める。


嫌な汗が背中に流れて、徐々に呼吸も荒くなって来た。
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