洗脳学級
瞬きをするくらい素早い動きだったし、本当に万引きしたのかどうかわからない。


自分の心臓が早鐘を打ち始めるのを感じながら、あたしはお店の陰からスマホでその子の様子を撮影し始めた。


女の子は焦った様子も逃げ出す様子も見せず、さっきまでと変わらず商品を見ている。


あたしは息を殺して撮影を続けた。


店内には店員が1人しかおらず、今はレジ打ちをしている。


とても女の子の挙動を確認している暇はなさそうだ。


女の子もそれを理解しているようで、レジからは見えない棚へと移動した。


あたしも店内へ入り、怪しまれないようにスマホをかざしつづけた。


そして次の瞬間、文房具の棚へ向かった女の子は消しゴムを2つポケットに入れるのを撮影したのだ。


肉眼で確認してみても女の子の上着のポケットは心なしか膨らんできている。


それから女の子はグルリと店内を回って見て、そのまま店を出てしまった。


間違いなく、レジは通っていない。


あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。


火事や事故もすごいけれど、人の犯罪を撮影することができるなんて思わなかった。
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