洗脳学級
「ここじゃない?」


スマホで地図を確認して歩いていた美世が、古いビルの前で立ちどまった。


3階建てのビルで外壁は劣化し、あちこちひび割れている。


カーテンがつけられていない窓は割られ、そこから中を覗いてみると壁にスプレーで落書きされているのがわかった。


デスクや椅子などは横倒しになり、散乱している状態だ。


「なにこれ、人がいないじゃん」


あたしは顔をしかめてそう言った。


それところか何年も使われていないようで、床には埃が積もっている。


「でも、ここで住所は合ってるみたいだし……」


美世が困ったようにそう言った。


「2階か3階にあるもかもしれない。行ってみよう」


昌一がそう言い、むき出しになったコンクリートの階段を上って行く。


2階や3階は通路の左右にドアが沢山あり、まるでアパートのようになっている。


上の階は住居だったのかもしれない。


「誰もいないね……」


ビルの中を歩いていても、コトリとも音がしない。


ひび割れや汚れもひどくて、とても人が住める状態ではなかった。
< 228 / 248 >

この作品をシェア

pagetop