洗脳学級
「大丈夫?」


後ろからそう声をかけてみると、成仁は笑顔を浮かべて「これくらい、平気だよ」と返事をした。


けれどその笑顔は無理をしているように見えた。


それから10分ほど経過して卓治が朝練から戻ってきていた。


いつものメンバーで話をしていたあたしを見つけて、卓治が近づいてくる。


「聞いてくれよ。俺、次の大会に出られそうなんだ」


そう言って笑顔を見せる卓治。


だけどどうしてか声が小さくて、みんなには聞こえないようにしているのがわかった。


「すごいじゃん!」


大きな声でそう言うと、卓治が「シーッ」と、人差し指を立てて来た。


「今成仁は大変な状態なんだ。あまり大きな声で言わないで」


あ、そうか。


怪我をして大会出場が危ぶまれている卓治に気を使っているのだ。


「ごめん……」


配慮が足りなかったと落ち込んだ瞬間、成仁がプッと噴き出した。
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