洗脳学級
卓治の実力では成仁に勝つことができないから、アプリは事故を起こすように誘導したのかもしれない。


「なんにしても、そんなの偶然だよ」


そう言ったのは沙月だった。


いつの間にかあたしたちの近くに立っていて、今の会話を聞いていたみたいだ。


「沙月……」


卓治がそう呟いて顔を赤くしている。


「外へ出たからって事故に遭うなんて誰も思わないでしょ」


沙月は卓治の味方みたいだ。


「そうかもしれないけどさ……」


佑里香は納得できない表情のまま、黙り込んでしまった。


アプリと事故の因果関係は誰にもわからない。


怪しいとか怖いとか思うだけで、なにもできない。


「そういえば佑里香は昨日どうだったの?」


話題を変えるため、あたしはそう聞いた。


「昨日?」


「ほら、弟のために晩ご飯を作ったんでしょ?」

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