洗脳学級
前方から見知った顔の2人が歩いてくるのが見えて、あたしは咄嗟に電信柱の陰に隠れていた。


心臓がドクドクと跳ねて、今みた映像が本物なのかどうか頭の中が混乱して来る。


あたしはそっと電信柱の影から顔を出して2人の様子を確認した。


見間違いでもなんでもない。


間違いなく、沙月と昌一の2人が並んで歩いているのだ。


2人の距離は近くて方がぶつかりそうな位置にいる。


「どうして……?」


戸惑いと混乱で、ジットリと汗が滲んできていた。


2人にはあまり接点がなく、教室内でも会話しているところをほとんど見たことがない。


沙月に言い寄っていく男子生徒は数多くいるが、昌一だけは興味を示していなかった。


それが、いつの間にこんな関係になっていたんだろう。


気が付くとあたしは自分の胸に手を当てていた。


なんでもないはずなのに、胸の奥の方がズキズキと痛んでいる。


昌一にとっての1番は自分であると、どこかで過信していた部分があったのだ。
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