ストーリー
「なんで……?」


こんなことあるはずがない。


目をこすりしっかりと屋上を確認する。


しかし、何度確認しなおしてみても、結果は同じだった。


ビルの屋上には遊園地などないのだ。


徐々に自分の体から血の気が引いて行くのを感じた。


このまま観覧車に乗っていてはいけないと、頭の中で警告音が鳴り響く。


ゴンドラは丁度真上辺りまで到達していて、あとは下がって行くだけだ。


「ねぇ、健太郎……」


視線は外へ向けたまま不安を払しょくするように健太郎に手を伸ばし、その手を握りしめた。


健太郎はあたしの手を握り返して来る。


しかし、その手の感触は人間のものではなく、ブヨブヨとした水風船のようだったのだ。
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