ストーリー
たしか、観覧車を見たからだったけど……。


どこを見回してみても、観覧車なんてなかった。


あたしの頭はどこか混乱しているようで、それ以上のことを思い出そうとするとひどく頭が痛くなった。


とにかく、健太郎を起こさなきゃ。


こんな所で寝ていたら風邪をひいてしまう。


「ねぇ、健太郎。起きて」


そう言って健太郎の体を揺さぶったとき……。


ゴトンッと鈍い音がして、健太郎の体が転がった。


え……?


力なく寝転ぶ健太郎の目は大きく見開かれ、眼球が少し飛び出している。


口から舌が垂れ下がり、唾液がテラテラと光っているのが見えた。


その瞬間、すべてを思い出していた。


そうだ、あたしは健太郎と2人で観覧車に乗ったのだ。
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