ストーリー
☆☆☆

家に帰ることなんてできなかった。


生気を失った健太郎の顔が、頭から離れない。


ひと気のない河川敷にやってきたあたしは、自分の体をキツク抱きしめた。


そうしていないと震えが止まらないのだ。


あたしが殺した。


この手で健太郎の首を閉めて殺してしまった。


「違う……あたしじゃない……あたしじゃない……」


ブンブンと左右に首をふり、頭を抱えてしゃがみ込む。


自分の両手を見下ろすと、必死で首を絞めた時の感触がリアルに蘇って来た。


「だって、あたしは明日香だと思ったから……だから……!」


自分自身に言い訳をしてみても、健太郎を殺してしまった事実は変わらない。


健太郎の死体はすぐに見つかり、あたしが犯人だということもバレてしまうだろう。
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