ストーリー
「鍵を持ち出したのがバレたのかもしれない」


そう言われてハッとした。


もしバレていれば、その使い道だって問い詰められるだろう。


なにせ鍵は咲紀の家のものなのだ。


もう、誤魔化しはきかないかもしれない。


「出ないと余計に怪しまれるかも」


あたしがそう言うと、和人は渋々電話に出た。


「もしもし?」


その声だけで緊張しているのがわかった。


あたしは缶ジュースを両手で包んで、和人の声に耳を傾ける。


微かにだけど、電話の向こうの声も聞こえてきていた。


「え? どういうこと――嘘だろ、まさか――」


徐々に和人の声が上ずって行く。


あたしは不安に押しつぶされそうになりながら、和人の電話が終るのを待つしかなかった。
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