ストーリー
☆☆☆

咲紀の家は学校からバスで10分ほど行った場所にあった。


閑静な住宅街の一角へ視線を向けると、沢山の人が行き来しているのがわかった。


この家の中で人が1人死んだのだ。


そう思うと、なんだか不思議な気分になった。


「あの、すみません」


丁度家から出て来た男性に、あたしは声をかけた。


見たことのない男性だけど、よく見ると目元が咲紀に似ている。


「え、なに?」


止まった男性は驚いた様子であたしたちへ視線を向ける。


しかし、制服姿だったのが良かったようで、すぐに咲紀の友人だと気が付いてくれた。


「咲紀が亡くなったって聞いて。でも信じられなくて……」


「そうか。それでわざわざ家まで来てくれたのか」


男性はそう言い、疲れた笑顔を浮かべた。
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