ストーリー
女性は汚物でも見るような目を、あたしへ向けている。


「やだちょっと。犯罪者が触った物にお金なんて出せないでしょ。全部取り替えてよ」


キツイ口調で、裕子おばちゃんへ向けてそう言うお客さん。


あたしはどうすればいいのかわからず、ただその場に突っ立っていた。


新しい商品を準備することも、レジをゼロに戻す事もできない。


「こんな所で堂々と働いて、恥ずかしいと思わないの? それにさっきから見てたらトロイのよねぇ。あたしは新人用の実験台じゃないんだけど!?」


女性の声は徐々に大きくなっていき、店内に響き渡る。


雑誌を読んでいた女性が逃げるように出て行くのが見えた。


「申し訳ありませんお客様。お客様のような方にお売りする商品は、当店には置いておりません」


裕子おばちゃんがそう言い、隣で女性を睨み付けている。


いけない。


こんなことをしたら、コンビニの評判が落ちて潰れてしまうかもしれない。


そう思うと、いてもたってもいられなくなった。
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