ストーリー
☆☆☆

なんの事情も知らない人が、知ったように言っただけだ。


あの女性はちょっと常識に欠けていたから。


そんな言葉を裕子おばちゃんは何度もあたしにかけてくれた。


裕子おばあちゃんの気持ちは痛いほど理解できたし、このくらいのことを気にしていたら社会復帰なんてできないことも、理解していた。


でも……。


あたしは世間で認識されているよりも、もっとヒドイことをしてきたのだ。


咲紀イジメのリーダーで、明日香への暴行を指示し、そして健太郎を殺した。


その事実を知ったとき、あの客はどうするだろう?


あたしだけじゃなく、この店ごと放火してしまうかもしれなかった。


そのくらいの恐怖と威圧感があったのだ。


「人の言葉は人を殺す」


私服に着替えてコンビニを出たあたしは、そう呟いた。
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