ストーリー
☆☆☆

《あたしがここで自殺をしたら、あいつらはどうするだろう? きっと慌てふためく事だろう》


《あいつらには血も涙もない。人を傷つけることで、自分が生きていると実感するのだろう》


《どれだけ人を苦しめても、それで自分が勝ったことにはならない。むしろ、自分の無力さを痛感することになる》


ペンを動かしながらも、あたしは背筋に冷たい物を感じていた。


咲紀の文章はただ上手なだけでなく、人の気持ちまで左右させるなにかがあった。


一文字書くたびに、全身に感じる咲紀からの怨み。


できるならこんなことやめてしまいたかった。


だけど、今のあたしは咲紀の文章に魅入られて、やめることすらできなかった。


咲紀の文章を盗むことで、その技術が自分の中に入り込んでくるような気がする。
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