ストーリー
☆☆☆

息が切れて全身から汗が噴き出して来る。


それでもあたしは走っていた。


咲紀の日記を確認したその瞬間、これは咲紀の呪いだと気が付いた。


この日記に書かれているすべての出来事は現実に起こって行くのだ。


それを止めるためにはどうすればいいか……。


立ちどまった先に見えたのは、学校の近くにある神社だった。


あたしは荒い呼吸を繰り返しながら石段を上がって行く。


あまり参拝者がいないのか、左右を山に囲まれた石段は草木に覆われている。


こんな神社で大丈夫だろうかと不安になったが、最寄りの神社がここだった。


長い石段を登り切り、あたしは鳥居をくぐった。


境内には誰の姿も見えない。


正月やイベント事の日には開けられるのだろうけれど、社務所も閉じたままだ。


「すみません! 誰かいませんか!?」


森の中に自分の声が響き渡る。


周囲は静かで、動物のなき声1つ聞こえてこなかった。
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