ストーリー
いつでもどこでもどんなときでも、その別世界へ旅行することができるから、あたしは小説が好きだった。


「小説の進みはどう?」


健太郎にそう聞かれて、あたしは曖昧に頷いた。


「まぁまぁかな?」


「そっか。俺は小説のこととかよくわからないけど、愛菜はすごいなって思う」


そう言われると、なんだか照れてしまう。


小説なんて、賞を狙おうとしなければ誰でも書けるものだ。


「健太郎だって書けるよ」


「本当にそう思う?」


「思うよ」


あたしがそう言うと、健太郎は照れたように笑った。


「才能なんてないくせに」


不意に、笑顔の健太郎がそう言った。


「え?」
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