“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「今日は、カスタード・パックを試してみましょう」

「なんだか、おいしそうな名前ね」

「私も初めて聞いた時、そう思いました。カスタード・パックは髪をしっとりとさせて、美しい艶を取り戻すことができるはずです」

「楽しみにしているわ。今日は外国語と歴史の授業があるから、夕方からになるかしら?」

「では、それまでに準備しておきますね。午前中、街にでかけてきます」

「だったら、ミシェルと行ってきなさいよ」

「いえ、ミシェル様をお借りするわけには」

「別にいいわよ。今日、ミシェル様はお休みの日だし」

「でしたら、余計に悪いですよ」

「そんなことなわ。ミシェルは息抜きがへたくそで、お休みの日は実家に行くか、部屋に引きこもっているかの二択だし」

「でしたら、ご実家へ帰るかもしれませんよ?」

「エリーがここに来てから、一度も実家に帰っていないわ。つまり、実家へはエリーに会いに来ていたのよ」

「それは、どうでしょう?」

ラングロワ侯爵家の大奥様もそんなことを言っていたが、ミシェル様が私に会うために来ていたなんてありえない。皆の、気のせいだろう。

「もう、じれったいわね。命令よ。今日のお買い物は、ミシェルを連れて行きなさい」

「で、でしたら、ミシェル様と、お買い物に行ってこようかなと」

「わかればよろしい。本人には言っておくから。今日はお仕着せ用のドレスではなく、外出用のドレスでも着てお出かけなさいな。そうでもしなければ、着る機会なんてないでしょう?」

「はあ、そ、そうですね」

そんなわけで、アリアンヌお嬢様の命令により、ミシェル様とお買い物に出かけることとなった。本人の知らないところで、勝手に決めていいものか。
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