“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました

「エリー、何かあったのか？」

「あ、や、いいえ！　こ、公爵家のお庭には、な、何があるのかなーと！」

早口になった上に、声がひっくり返った。何かありますと言ったようなものだったが、ミシェル様は丁寧に公爵家の庭にある施設を教えてくれた。

ガラス張りの温室に地下氷室、オレンジガーデン、それから庭の端には、薬草を植えたウォール・ガーデンもあるようだ。

「ウォール・ガーデンか。薬草はどんどん増えるから、他の植物と分けなければならないんですよね」

「庭師からそんな話を聞いたことがある。詳しいな」

「ええ……まあ」

詳しいというミシェル様の言葉に、違和感を覚える。私は、この知識をどこで得たのか。薬草の勉強なんて、今まで一度もしたことがない。それなのに、私は知っている（、、、、、）。

「エリー、大丈夫か？」

「！」

ミシェル様が私の肩にそっと手を添えた瞬間、ハッとなる。いつの間にか額に汗を掻き、手先がぶるぶると震えていたのだ。