“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「具合が悪いのであれば、しばし休んだほうがいいだろう」

「いいえ。平気、です」

ミシェル様の声を聞いているうちに、震えは収まった。いったい私はどうしてしまったというのか。

子どものころも、同じような違和感を覚えることが多々あった。

見たことも聞いたこともない物を、私はあたかも実在していたかのように信じ込んでいたのだ。

良い香りがする石鹸も、髪の毛がツルツルになるシャンプーやリンスも、体を癒す入浴剤だって、ここには存在しない。

いったいどこから思い浮かんだ言葉なのか。それすら、わからなかった。

「やはり、具合が悪いのではないか?」

「大丈夫です! 元気!」

そう言って顔を上げたら、ミシェル様の顔が眼前にあって驚いた。

「本当に、平気なのか?」

「ほ、本当です。私、嘘、つかない」

なぜか、片言になる。

息がかかるほど近い位置にいるので、妙に緊張してしまったのだ。
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