“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
二階にはルメートル公爵、デルフィネ様、レティーシア様の私室がある。調査するのにうってつけの掃除区画だ。張り切って階段を登った。

ブラシを使い、カーペットをきれいにする。カーペット専用洗剤に触れる前に、毒か否かを判別する水晶に当ててみる。すると、紫色に光った。

「げっ!」

人体に悪影響ありの洗剤だなんて、恐ろしすぎる。手袋とマスクは必須だろう。

眼鏡を装着していてよかった。

一時間ほどカーペットをきれいにしていたところで、レティーシア様の部屋の前に辿り着いた。耳を澄ましてみたが、特に会話など聞こえない。

まあ、最初から上手くいくわけがない。今日のところは真面目に作業することとなった。

証拠集めの中でもっとも重要なのは、使用人達の雑談から情報を拾うこと。さっそく、休憩室で気になる情報を得ることができた。

「それにしても、旦那様はどうしたんですかね~」

客間メイドのひとりが、ポツリと漏らす。

「以前までは亡くなった奥様とアリアンヌお嬢様を溺愛されていたのに、今はすっかりデルフィネ様とレティーシアお嬢様にぞっこんですから」

なるほど。ルメートル公爵は再婚してから変わってしまったと。

「なんだか、性格まで変わった気がして……。今日、お茶を持ってくるタイミングが遅いって、怒られたんですよ~。今までそんなこと一度もなかったのに」

そんなルメートル公爵の豹変に対するぼやきは、客間メイドだけではなかった。従僕や御者も同様に、ちょっとしたことで怒られたらしい。
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