“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「以前までは毎日ニコニコしていて、穏やかな方だったのに、最近はカッカしていて」

最近、目の下にクマがある上にゲッソリしているので、病気なのでは？　という憶測も飛んでいるようだ。

「何よりも、あんなにアリアンヌお嬢様を可愛がっていたのに、離れに行くと言っても引き止めない上に、アリアンヌお嬢様の薔薇園を潰してレティーシアお嬢様のために東屋を造ろうとしているなんて、酷いです……」

東屋を造るように命じたのは、ルメートル公爵の独断だったのか。それとも、レティーシア様の希望なのか。その辺詳しく聞きたいけれど、新入りの私が深く首を突っ込んだら怪しまれるだろう。出かかっていた疑問は、ゴクンと飲み込んだ。

話題はどんどん変わっていき、またしても気になる情報を話し始める。

「レティーシアお嬢様はいいんですけれどねえ～」

「見た目と言動はキツイのですが、一応筋は通っていますし」

「他人に厳しく、自分に厳しいタイプなんですよね」

「勘違いされやすい御方かと」

レティーシア様の評判は、悪くない。というか、よいほうだろう。意外だ。

「アリアンヌお嬢様が離れに行って一番ショックを受けていたのは、レティーシアお嬢様ですからね」

「アリアンヌお嬢様に威勢よく『逃げるのか？』、『そこまで意気地なしだったら、さっさと出て行って』とおっしゃっていましたが、行かないでと言いたかったのでしょう」

「本当、レティーシアお嬢様はアリアンヌお嬢様が大好きなんですよね。表には絶対出しませんが」

「だから、アリアンヌお嬢様の薔薇園を潰して、レティーシアお嬢様のための東屋を造ると聞いた時、愕然としていたそうですよ」

どうやら、レティーシアお嬢様が東屋を建てるように頼んだのではないようだ。

もっと話を聞いていたかったけれど、休憩時間が終わってしまった。
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