“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
話し終えたあと、ミシェル様は物憂げに目を伏せる。きっと、大変勇気がいる判断だったのだろう。

「すみません、無理やり聞き出してしまって」

「いや、いい。あの時、どうすべきだったのか、数年もの間自問することがあった。私は次男で、引き継ぐものは父から授かった名ばかりの儀礼称号しかない。国王陛下の親衛隊となったほうがよかったのではと思うこともあった。しかし、改めて振り返ってみたら、あの時の判断は間違っていなかったのだとはっきり言える。今、アリアンヌお嬢様にお仕えできていることは、最高の名誉だから」

「そう、ですね」

だから、アリアンヌお嬢様を陥れようとする者を、徹底的に排除しなければならない。

「話を聞いていると、デルフィネ様がどうにも策士なのではないかと、思うようになってきました」

「そうだな」

夫を亡くした二年後に公爵と結婚し、レティーシア様を王太子妃候補として立てることに成功させた。驚くべき剛腕だろう。

「公爵を洗脳し、アリアンヌお嬢様を陥れ、公爵家を我が物として操っているのならば、悪事は暴くべきだろう」

ただ、公爵が洗脳されているという証拠はどこにもない。
< 169 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop