“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました

「身支度を整えましょう」

「ええ、お願いね」

まずはドレスを着てもらい、ドレスが汚れないように布をかけてから化粧を始める。

下地のクリームを塗り、白粉をはたいて、頬紅を差す。アイシャドウは三色。明るい薄紅色をアイホール全体に塗り、暗い色を瞼の内側に塗っていってグラデーションにして仕上げる。

これが、二十代社会人であればコンシーラーやらフェイスパウダーやら、いろいろ顔面工作をしなければならない。

しかし、相手は十四歳の美少女。そのままでも美しいので、化粧は最低限で構わない。

最後に、先日作った口紅を塗る。

「アリアンヌお嬢様、こちらが以前頼まれていた口紅になります」

「まあ、素敵な色合いね。この色、どこにも売っていないの。楽しみだわ」

「では、塗ってみますね」

「お願い」

まずは、ブラシで唇のラインを縁取ってから、少しずつ塗っていく。

仕上げに、特製のグロスを塗った。これで、化粧は完璧である。

「アリアンヌお嬢様、いかがですか？」

「きれい！　素敵な色合いだわ！」

満足してもらえたようで、何よりである。頑張って作った甲斐があったものだ。

髪は左右の髪を三つ編みにして、ピンを使って後頭部で纏める。仕上げに、刺を抜いた蔓薔薇をティアラのように飾ったら完成である。

髪型も、アリアンヌお嬢様にお気に召していただけたようだ。