“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「デルフィネよ、いい加減にしないか!」

その声は、ルメートル公爵のものだった。

「自分のやったことを棚に上げて、罪もない者を糾弾して、娘を貶めて、そんなことが赦されると思っているのか?」

「だ、旦那様、な、なんのこと、ですの?」

「私に毒を盛っていたのは、デルフィネ、お前だろう?」

「わ、私が、旦那様に毒を盛るわけがないですわ」

「嘘を吐け! お前が手渡してきた薬を飲んだあと、具合が悪くなっていたのだ。その件に関しては、日記に記録を付けている」

「で、ですが、どこに、そんな根拠が……」

「根拠ならば、ここにあるよ」

そう言って出てきたのは、少年国家錬金術師のソールさんだった。

「公爵夫人の名で注文された薬品と、公爵に手渡していた薬の成分が一致している。残念ながら、これらは毒だ。注文書の直筆サインもある」

「そ、それは、私を陥れようとした錬金術師の工作で──」

「お前の愛人共も、罪を共犯者であると自供しているぞ」

ぞろぞろと、十名ほどの若い男性がでてきた。彼らは全員デルフィネ様の愛人らしい。まさか、十人も愛人がいたなんて。

「いや……なんかすごい……」

「エリーが来た日、堂々と公爵家の庭に連れ込んでいて、ほとほと呆れたがな」

「あ、やっぱりミシェル様も気づいていたのですね」

「当たり前だ」
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